一括下請負について
                          一括下請負Q&A           

 一 一括下請負とは
 (1)建設業者は、その請け負った建設工事の完成について誠実に履行することが必要です。
   したがって、次のような場合は、元請負人がその下請工事の施工に実質的に関与していると認められる
   ときを除き、一括下請負に該当します。

   @ 請け負った建設工事の全部又はその主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合
   A 請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の工事を
    一括して他の業者に請け負わせる場合

 (2)  「実質的に関与」とは、元請負人が自ら総合的に企画、調整及び指導(施工計画の総合的な企画、
     工事全体の的確な施工を確保するための工程管理及び安全管理、工事目的物、工事仮設物、工事用
     資材等の品質管理、下請負人間の施工の調整、下請負人に対する技術指導、監督等)を行うことを
     いいます。単に現場に技術者を置いているだけではこれに該当せず、また、現場に元請負人との間
     に直接的かつ恒常的な雇用関係を有する適格な技術者が置かれない場合には、「実質的に関与」し
     ているとはいえないことになりますので注意してください。
     なお、公共発注者においては、施工力を有する建設業者を選択し、その適正な施工を確保すべき責
     務に照らし、一括下請負が行われないよう的確に対応することが求められることから、建設業法担
     当部局においても公共発注者と連携して厳正に対応することとしています。

 (3) 一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事一件ごとに行い、建設工事一
    件の範囲は、原則として請負契約単位で判断されます。
   (注1) 「その主たる部分を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、下請負に付された工事の質
       及び量を勘案して個別の工事ごとに判断しなければなりませんが、例えば、本体工事のすべてを
       一業者に下請負させ、附帯工事のみを自ら又は他の下請負人が施工する場合や、本体工事の大部
       分を一業者に下請負させ、本体工事のうち主要でない一部分を自ら又は他の下請負人が施工する
       場合などが典型的なものです。
   (具体的事例)
      @  建築物の電気配線の改修工事において、電気工事のすべてを一社に下請負させ、電気配線の
        改修工事に伴って生じた内装仕上工事のみを元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負さ
        せる場合
      A  住宅の新築工事において、建具工事以外のすべての工事を一社に下請負させ、建具工事のみ
        を元請負人が自ら施工し、又は他の業者に下請負させる場合
   (注2) 「請け負った建設工事の一部分であって、他の部分から独立してその機能を発揮する工作物の
       工事を一括して他の業者に請け負わせる場合」とは、次の(具体的事例)の@及びAのような
       場合をいいます。
   (具体的事例)
      @  戸建住宅10戸の新築工事を請け負い、そのうちの1戸の工事を1社に下請負させる場合
      A  道路改修工事2キロメートルを請け負い、そのうちの500メートル分について施工技術上分
        割しなければならない特段の理由がないにもかかわらず、その工事を1社に下請負させる場合

 
 二 一括下請負に対する発注者の承諾
  元請負人があらかじめ発注者から一括下請負に付することについて書面による承諾を得ている場合は、一括
  下請負の禁止の例外とされていますが、次のことに注意してください。
  @  建設工事の最初の注文者である発注者の承諾が必要です。発注者の承諾は、一括下請負に付する以前
    に書面により受けなければなりません。
  A  発注者の承諾を受けなければならない者は、請け負った建設工事を一括して他人に請け負わせようと
    する元請負人です。
    したがって、下請負人が請け負った工事を一括して再下請負に付そうとする場合にも、発注者の書面に
    よる承諾を受けなければなりません。当該下請負人に工事を注文した元請負人の承諾ではないことに
    注意してください。

  

Q1

 施主から500万円で地盤改良工事を請け負いましたが、都合により自ら施工することができなくなったため、利益はもちろん経費も一切差し引かず、A社に500万円でこの工事の全部を下請負させました。この場合でも建設業法22条に違反することになるのですか。


 建設業法が一括下請負を禁止しているのは、発注者は契約の相手方である建設業者の施工能力などを信頼して契約を締結するものであり、当該契約に係る建設工事を実質的に下請負人に施工させることはこの信頼関係を損なうことになるから、発注者保護という観点からこれを禁止しているのであって、中間搾取の有無は一括下請負であるか否かの判断においては考慮されません。したがって、本件のように請け負った建設工事をそっくりそのまま下請負させれば、元請負人が一切利潤を得ていなくても一括下請負に該当します。

Q2  小学校の増築工事を請け負い、当該工事の主たる部分である基礎工事、躯体工事、仕上工事および設備工事を1社に下請負させました。一応現場には当社の技術者を置いていますが、この場合でも建設業法第22条に違反することになるのですか。


 請け負った建設工事の主たる部分を一括して下請負させる場合であっても、元請負人として自ら総合的に企画、調整および指導を行い、当該下請負させた部分の施工につき実質的に関与していれば、一括下請負には該当しません。しかし、単に現場に技術者を置いているというだけでは「実質的に関与」しているとはいえません。「実質的に関与」しているとの判断がされるためには、施工計画の総合的な企画、工事全体の的確な施工を確保するための工程管理および安全管理、工事目的物、工事仮設物、工事用資材等の品質管理、下請負人間の施工の調整、下請負人に対する技術指導、監督などを実際に行っていることが必要です。
 
Q3  A市の公民館の新築工事を落札・契約し、当該工事のうち基礎工事と躯体工事について下請契約をB社と締結しました。3カ月後、この公民館の外構工事の入札が実施され、これを落札・契約しましたが、当該外構工事については公民館の本体工事と施工場所も同一で、工期も一部重なっていることから、本体工事と一体として施工することとし、当該外構工事についてB社と追加変更契約を締結したところ、発注者であるA市から外構工事については、一括下請負に該当すると指摘されました。この場合は本当に一括下請負になるのでしょうか。


 一括下請負に該当するか否かの判断は、元請負人が請け負った建設工事1件ごとに行うものであり、建設工事1件の範囲は原則として請負契約単位で判断することとなっています。本件の場合、外構工事が本体工事とは別に入札・発注されていることから、たとえ外構工事が本体工事と施工場所も同一で工期も一部重なっていたとしても、本体工事と外構工事とを取りまとめて1件の建設工事として扱うことはできません。したがって、この外構工事全部をB社に下請負させるとすれば、一括下請負に該当することとなります。
 
Q4  道路改修工事に関して、その工事の全部をA社1社に下請負させましたが、工事に必要な資材を元請負人としてA社に提供しています。この場合も一括下請負になるのでしょうか。


 適正な品質の資材を調達することは、施工管理の一環である品質管理の一つではありますが、これだけを行っても、元請負人として自ら総合的に企画、調整および指導をし、その施工に実質的に関与しているとはいえず、一括下請負に該当することになります。
 

Q5  一括下請負の禁止は元請負人だけではなく下請負人にも及ぶということですが、下請負人には一括下請負に該当するか、元請負人が「実質的に関与」しているかどうかがよく分からないこともあるのではないですか。


 発注者保護という一括下請禁止規定の趣旨からは、直接契約関係にある元請負人の責任がまず問われるべきであり、また、特に公共発注者においては、施工力を有する建設業者を選択し、その適正な施工を確保すべき責務に照らし、一括下請負が行われないよう的確に対応することが求められると考えられますが、下請負人においても、工事の施工に係る自己の責任の範囲および元請の監理技術者、または主任技術者による指導監督系統を正確に把握することにより、漫然と一括下請負違反に陥ることのないように注意する必要があります。
 そもそもだれが元請負人における当該工事の施工の責任者であるのか分からない状態で下請負人の施工が適切に行われることは考えられず、瑕疵(かし)が発生した場合の責任の所在も不明確となります。したがって、下請負人にとって元請負人の適格な技術者が配置されていると信じるに足りる特段の事由があり、事後に適格性がないことが判明したなど、やむを得ない事情がない限り、元請負人において適格な技術者が配置されず、実質的に関与しているといえない場合には、原則として、下請負人も建設業法に基づく監督処分などの対象となります。

Q6  A市から電線共同溝工事を請け負い、電線共同溝の本体工事をB社に下請負させ、その他の信号移設工事や植栽・移植工事等はそれぞれ他の建設業者に下請負させています。このような場合も一括下請負に該当するのでしょうか。


 複数の建設業者と下請契約を結んでいた場合であっても、その建設工事の主たる部分について一括して請け負わせている場合は、元請負人が実質的に関与している場合を除き、一括下請負となります。本件のような場合には、実質的な関与の内容について精査が必要と考えられます。
 
Q7  A県からトンネル工事を請け負い、工事の全体の施工管理を行っていますが、工事が大規模であり、必要な技術者もあいにく十分に確保することができなかったので、1次下請負人にも施工管理の一部を担ってもらっています。主たる工事の実際の施工は2次以下の下請負人が行っています。このような場合も一括下請負に該当するのでしょうか。


 元請負人も1次下請負人も自らは施工を行わず、共に施工管理のみを行っている場合、実質関与についての元請負人と1次下請負人それぞれどのような役割を果たしているかが問題となり、その内容いかんによって、その両者またはいずれかが、一括下請負になります。特に、元請負人と1次下請負人が同規模・同業種であるような場合には、相互の役割分担などについて合理的な説明が困難なケースが多いと考えられます。
 
Q8  A県から橋梁工事を受注しましたが、隣接工区で実際に施工を行っている建設業者に、施工の効率化の観点からも有効と考え、工事の大部分を下請負させました。このような場合も一括下請負に該当するのでしょうか。


 自らが請け負った建設工事の主たる部分を一括して他人に請け負わせた場合には、実質的な関与をしている場合を除き、一括下請負に該当します。本件のケースのような場合には、下請負人が隣接工区を含め、一体的に施工し、工事全体にわたって主体的な役割を果たしているケースが多いと考えられ、元請負人の実質的な関与について疑義が生じるケースであると考えます。

Q9  地盤改良整備を含む道路改良工事を請け負いましたが、当該地盤改良には、特別な工法が要求されるため、地盤改良技術を持つ子会社に実際の工事を行わせました。このような分社化は経営効率化の要請によるものであり、また、子会社とは連結関係にあることからも一括下請負に該当しないと考えますが、いかがでしょうか。


 連結関係の子会社であるとしても、実際の工事を一括して他社に行わせた場合、別々の会社である以上、一括下請負に当たります。このように親会社が自ら実質的な業務を行わない場合には、親会社を介さず直接子会社に請け負わせることが適当です。
 
Q10 「実質的に関与」しているとは、具体的にどのようなことを行っていることが求められますか。
 

 元請負人が配置した主任技術者または監理技術者が、現場に専任であって、元請負人と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることは言うまでもありませんが、これら技術者が、発注者との協議、住民への説明、官公庁等への届け出など、近隣工事との調整、施工計画、工程管理、出来型・品質管理、完成検査、安全管理、下請業者の施工調整・指導監督などのすべての面において、主体的な役割を果たしていることが必要です。その際、当該技術者が、過去に同種または類似の工事での施工管理を行った経験の有無も判断の際の参考になるでしょうし、また、業務量等に応じてその他の必要な技術者を配置していることが求められます。

Q11  「実質的に関与」していることの確認は、具体的にどのような方法で行うのでしょうか。
 

 一括下請負の疑義がある場合には、まず、当該元請負人の主任技術者または監理技術者に対して、具体的にどのような作業を行っているのかヒアリングを行います。ヒアリングの際、その請け負った建設工事の施工管理などに関し、十分に責任ある受け答えができるか否かがポイントとなります。また、必要に応じ、下請負人の主任技術者または監理技術者からも同様のヒアリングを行うことが有効です。

 その場合、元請負人が作成する日々の作業打ち合わせ簿、それぞれの請負人が作成する工事日報、安全指示書等を確認して、実際に行った作業内容を確認することが有効です。これらの帳簿の中に、具体的な作業内容が記載されていない場合、または記載されていても形式的な参加に過ぎない場合などは一括下請負に該当する可能性が高いと言えます。